那須にあこがれ、6年間で4回引越したヤドカリ夫婦の体験記。

風の麓

なぜ那須か?

海沿いの田舎町で生まれ育った私が、初めて牧歌的な風景に出会ったのが栃木県の那須だった。

高校生になって中型バイクを乗りまわし、仲間とツーリングで初めて来た場所がここ、那須なのだ。その時に見た風景が頭に焼き付いて離れず、のちに何度か来ることになる。

バイクからクルマになってもそれは変わらず、妻と二人のときも、子供ができ家族が増えてからも、とりあえず「那須、行く?」となる。まぁ、家からの距離がほどよく、日帰りが十分できる場所だったということが、一番の理由ではあるのだが。

 

そして那須へ(引越し1回目)

運命か?

長年勤めた会社を辞め、那須への移住を決めた。那須塩原市の不動産屋で物件を探す。すると担当者が「こんな物件もありますよ」と言って出してきたのが、リゾートマンションの賃貸物件。リゾートホテルに隣接する地上14階建てのマンションだ。温泉大浴場と運動器具・卓球台がそろったジム付き。家賃は普通のアパートと変わらない金額に、私も妻も興味津々。さっそく内覧、そして即決する。

非日常の生活がはじまる

仕事が終わってすぐに温泉に浸かれる。こんな贅沢が味わえるなんて思ってもみなかった。そして、進入路がホテルと共用のため、マンションへの出入りは当然そこを通る。リゾートと名のつくことから分かるように、街灯や木々のライトアップがこれでもかとちりばめられているため、一歩その空間に入ると日常とは別世界。とにかくキレイである。

そもそも私と妻はランタンの灯りが大好きで、部屋の照明も蛍光灯がついてる場合は必ず電球色に変えるほど。那須が好きなのは、この電球色の灯りがあちこちにあって、すごく落ち着くからというのも理由のひとつ。

リゾートマンションであることを、あとで思い知る

リゾートマンションなのである。それに気づくのは住み始めてしばらく経ってからだった。普段は100室近くあるうち20室ほどしか住んでなく、本当に静かである。しかし、くどいがリゾートマンションである。GWや夏休みになると大勢の人々が首都圏からやってくるのである。(車のナンバーは、ほとんどが東京近郊のナンバー)自分たちのクルマが駐車できない・・・。

そして子供の声がこだまする。ジムで卓球でもしたいなと思っても、だいたい誰かがやっている。もちろん大浴場もいっぱい・・・。夏休みって長いんだよね。

徐々にストレスとなる

そんなハイシーズンのことは気になるレベルではない。まして子供は好きだし賑やかで良い。そして、年に数回程度である。

さらにくどいが、リゾートマンションである。オーナーのほとんどは別荘として所有している、いわゆる裕福な人たちである。仕事なんぞしません。「今日はゴルフ、明日もゴルフ。あそこのコースはどうとか、こうとか」、「あの店の〇〇はおいしいから行ってみてよ」など、大浴場で住民同士が語っている。私のような一般庶民にはついていけない生活レベルなのである。

そのうちにだんだんと、大勢のひとが入っているときを避けている自分がいたのである。しかし、今思うと贅沢な時間を過ごしていたな・・・。1年半で引越す。

 

引越す(2回目)

妻が「夢で見た」

そんなことを妻と話す機会も増えてきたとき、ネットで見つけた一戸建ての貸家。平屋である。情報を頼りに探してみると、あった。ここで間違いない。そこは那須連山を遮るものなく臨むことができる、まさに絶景の物件。妻は言う・・・「ここ、夢で見た」。

やはり首都圏に住むオーナーが別荘として建てたもの。暖かい季節だけ利用する目的であったそうで、完全なプレハブ小屋。広葉樹の木立の中、敷地は200坪。自由に使っていいということで、ガレージの中にはいろんな道具が詰まっていた。刈り払い機、そうか草が伸びるんだ200坪・・・。しかし!なによりこのロケーションに圧倒され、決めた。

木漏れ日がやさしい、それもつかの間

引越したのは晩夏。妻は大好きなガーデニングができてご機嫌だった。木を切り倒したり、石を並べたりして花壇をつくる。庭に椅子とテーブルを並べ、お茶を飲んだりご飯を食べたり。日差しが、木漏れ日がからだにやさしい。・・・草刈りはかなりキツイ。200坪。

それもつかの間、季節は秋に。庭は広葉樹に囲まれている。広葉樹は落葉する。その量ときたらハンパない。風が吹いたら落ち葉集めは必須となった。そして屋根に落ちるドングリの音。プレハブの屋根だから響くのなんの、そのうち太さ10Cmほどの枝も落ちた。それも夜中。だ、大丈夫か~この家。

那須の洗礼を受ける

北海道から来た人が言う。「ここは北海道よりも寒いよ」。えっ、マジ?どういうこと???理解するのに時間はかからなかった。それは・・・那須連山から吹き下ろす「那須おろし」という強烈な風のことである。

そしてここ、先述したとおり遮るものはなにもない。風速20Mはあたりまえ。容赦なく冬の凍える風が吹き抜ける。体感だが―10℃は超えてると思う。そしてプレハブである。冷える。おそらく断熱材など入っていないんじゃないか?ひぇー!

手のかかる家

水道の配管が丸見え。こんな寒いところで?水道は間違いなく凍る。蛇口を少し開けて水をちょろちょろと出しておく。気温が下がる予報が出ると給湯器の水抜きは必須。2~3日留守にするときは家全部の給水経路から水を抜く。そうしないと水道管破裂という悲惨な目に合う。そしてトイレには不凍液を混ぜておく。(便器とタンクの中、凍る)

いやいや手のかかる家だ。いつだったか、朝、凍って出なかった洗面台の蛇口を、なんと開けたまま外出してしまった。帰ったら、ご想像どうり。水が元気よく噴き出ていた。え~っ、いつから出ていたの、これ~!ガックリ。水道代を心配したのは当然のこと。トホホ。

夏が来~れば思い出す

しかし、それでもここは今でも思い出深い場所。それは何といっても最高のロケーションに尽きる。目の前にそびえる那須連山。朝日があたると赤く染まるのだ。特に冬、雪化粧したときに染まるその絶景といったら、言葉では言い表せない。泊まりに来ていた両親も感動していた。冬って、雪って、いいなとしみじみ思った瞬間。

そして、南側に広がるのは田んぼ。その田んぼに水が入る時期になるとまるで目の前が湖のようになる。そして流れこむ水のキレイさを証明するのが、7月も夏休みに入る頃から飛び交うホタルである。クルマのウィンカーを点滅させると、それに誘発されて一斉に光る。なんという幻想的な・・。家でホタルが見れるなんて・・。なので原稿を書いている今も強烈に思い出すのである。

しかしながらこの家には重大な問題が・・。それ以上はノーコメント。これがネックで引越すことに。これさえなかったら・・トホホ、残念でしかたない。

 

引越す(3回目)

南欧風の・・・

今度は標高600Mほどの別荘地内。ここに建つ、またしてもリゾートマンション(懲りない(-_-;)。しかし今度は低層の2階建てのこじんまりした物件。大きな一枚のガラス窓。そこから四畳半ほどの広さのバルコニーが。そして南側に設置された日差しが降りそそぐ浴室。出窓のあるリビングルーム、と、どこをとっても明るい。まるで南欧(あくまで私見)のようなしゃれた間取りである。で、即決。(今度は大丈夫かぁ?)

あったかくなるとバルコニーに椅子とテーブルをセッティング。パラソルを立てて気分はもうリゾートである。朝から外で食べるごはんは超おいしい。これはたまらん。そして冬はバルコニーにも雪が積もる。そこで雪だるまを作ったり、かまくらを作ったり。ここ、以外に遊べる。

紅葉がすばらしい

ここは心配していたハイシーズンでも人はあまり増えず、とりあえずホッとした。

やはり広葉樹にかこまれ成熟した別荘地内。とても静かである。初秋に引越したのだが、その木々が秋本番になると赤く染まった、これは見事だった。よく別荘地内を妻と散歩した。が、あることに気づく。静かすぎる。家からは物音が聞こえない、テレビの音なども一切。あとで気づいたのだが、当然、子どもの声が聞こえない。ということは高齢の世帯がほとんどだということ。まぁ、ここじゃ学校も遠いしあたりまえと言えばあたりまえなのだが。

冬の楽しみ、雪中散歩

紅葉を眺めながらの秋の散歩もよかったが、アウトレットで見つけたKamik(カミック)のスノーブーツ(これがすこぶる良い)。これを履いてダウンジャケットを羽織る。そして、ニット帽と手袋。これで完璧!顔はひんやり冷たいが身体はあったかい。雪の中、キーンと張りつめた空気の中散歩する。これ冬の醍醐味ですよ。クセになる。

 

引越す(4回目)そして今

急に・・・

親のこともあり地元へ帰ることになった。そして1年後また那須に戻る。今度の住み家はごくごく普通のアパートメント。家賃が安いということが1番。でも、木立に囲まれた静かな環境で、鳥のさえずりも聴けてなかなかよろし。そして現在に至っている。

 

最後に

しかしながら、那須にいる間のわずか6年のうちに、4回も引越すのである。我ながら呆れる。とはいうものの、引越した先々は、それぞれに良いところがあって楽しかったのも事実。

そんな私たちが、今でも足を運んでしまうのが、あのプレハブの寒~いところ。あそこを離れてから何回行っただろうか?たぶん14~15回にはなる。田んぼをはさんだ道路に車を止めて、しばし眺めるのである。家の背後には那須連山が鎮座する・・・。

それというのも、そのプレハブの家の隣には、かなりの高齢のおじさんがひとりで住んでおり、元気にしてるか気になるというのも理由のひとつではある。庭先で野菜を育てており、よくお裾分けしてくれた。私も地元の海の名物を分けてあげたりして、すごく喜んでくれた。長生きしてほしいと切に願う。

願わくば、またここに戻って来たい、それが妻と私の共通の思いなのだ。

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