魔法にかけられた小説『孤島の鬼』

Lyrical_H

はじめに

最近、若者の活字離れが深刻だとニュースや本の中で言われるようになりました。

私は今年度高校を卒業見込みの18歳。いわゆる「若者」の全盛期と言ってもいい年代かもしれません。

そんな私から見ても、確かにみんな本を読まないこと読まないこと。

つい先日卒業となった部活動では小説を書いていたのですが、どれだけ字を大きく書いても内容を簡潔にしても、活字ばかりの小説というだけで部員以外の生徒はあまり読んでくれませんでした。

小説と呼べるものを書き始めて早八年、そんな周囲の対応にも慣れたものですがやはり寂しく感じられます。

そんな私は本の虫……というほどではありませんがそれなりに読書を嗜む人種。

好きな作家だってたくさんいます。

これは、私が人生をかけて敬愛している作家の推し作品を語り、あわよくば同志が増えてくれないか……という希望を少しだけ含ませた、好き語りの記事になります、

そんな私が紹介する作品、それは──

探偵小説の神様・江戸川乱歩先生の『孤島の鬼』です。

 

そもそも江戸川乱歩って誰?

「『孤島の鬼』以前に江戸川乱歩なんて知らないよ!」という方。

大丈夫。私が乱歩先生への愛を込めてご説明致します。

江戸川乱歩という名前を聞いたことがある方は多いかとは思いますが、彼がどんな人物だったのかは知らない方も多いのではないでしょうか。

乱歩先生は大正から昭和にかけて活躍した小説家で、主に推理小説を書いていました。

彼自身探偵として仕事をしていた経歴を持っているので、きっと頭が良かったんでしょう(あの早稲田大学卒業だそうです)。

ちなみに、本名は平井 太郎さんといいます。

平凡な名前とは裏腹に独特な世界観を持っていた乱歩先生ですが、人としてもかなり変わっていたようで、40回以上も引越しをしたり10以上の職業を経験したりと、かなりアクティブな人生を送っています。

筆者が好きなストーリーは、海外にはピアノを弾きながらネタを考える小説家がいると聞き、自分は三味線でと練習を始めるものの、アイデアは浮かんでこずただの三味線上手になった──というもの。

他にも乱歩先生にまつわる面白い話はたくさんあるので、気になる方はぜひ調べてみてくださいね。

乱歩先生だけにとどまらず、「文豪」と呼ばれる人々は一癖も二癖もある方が多いようです。

 

『孤島の鬼』って?

この記事の主役・『孤島の鬼』は、乱歩先生が1930年頃に執筆した長編小説です。

ごく簡潔にあらすじをまとめると、

「犯人の分からない怪事件により恋人を殺された主人公が、その謎を追って絶海の孤島へ向かい、事件を解決する冒険譚」

となります。

なるほどありがちな設定だと思った方、甘いです。

実はこの作品、「これぞ江戸川乱歩!」という要素をふんだんに詰め込んだ、いわば「江戸川乱歩ハッピーセット」なのです。

 

『孤島の鬼』の底知れない魅力

江戸川乱歩作品を江戸川乱歩作品たらしめるもの、それは即ち「エロ&グロ」。

もちろん、ただ猟奇的なだけではありません。

そこには私のような素人には説明できない、奥の深い芸術性があります。

これは乱歩先生の作品を読んだことのある方にしか分からないかとは思いますが、この芸術性を言葉を尽くして説明するのなら、「ページを捲らざるを得ない魅力」でしょうか。

ただただエロくてグロいだけなら、学校で飛び交う下ネタや転んだ際に流れる血を果てしなく嫌う私が耐えられるはずがありませんからね。

乱歩先生の作品には、そんな私のことでさえ惹きつけてしまう魔法がかかっているような気がしてしまいます。

そして、この『孤島の鬼』はその魔法が特に強い。

その魔法をかけているのは一体誰なのでしょうか。

 

江戸川乱歩が生み出した魔法使い・諸戸道雄

諸戸道雄くんは、『孤島の鬼』でかなり重要な役目を担っている登場人物です。

また個人的な話にはなりますが、乱歩先生の小説を片っ端から読み漁っていた二年前の私にとって、最も衝撃的なキャラクターでした。

この諸戸くんの何が衝撃的か、それは彼の主人公への想いにあります。

「君と抱き合って死んでいく方が嬉しい」

「僕の愛を受けて」

まあ愛の重いこと。決して貶してはいませんが、ここまで誰かのことを想うことができるのはすごいですね。

主人公の蓑浦くんは、作中で何度も諸戸くんから上記のような愛の言葉を贈られます。

諸戸くんはかなり一途な性格で、蓑浦くんが他の女性と婚約しても諦めずにアタックを続けていました。

そんな諸戸くんは、蓑浦くんの恋人が殺されてタイトルにもある孤島(岩屋島といいます)に向かう際にも同行しています。

「そんなところまで同行するなんて、蓑浦くんに何かいかがわしいことしようと企んでるんじゃ……」と疑ってしまいそうになりますが、諸戸くんは至って真面目。

蓑浦くんのことが好きだからこそ助けてあげたいし、謎も解明したいという想いがありました。

諸戸くんがいなければ蓑浦くんは死んでいた、という場面もいくつか見られます。

ただそこは乱歩先生、そんな純粋な恋愛だけで終わらせるわけはなく、物語の局面で取り乱した諸戸くんが蓑浦くんを組み伏せるシーンもあるのですが、この状況では仕方ない……と読者に思わせる手腕が光ります(もちろん現実で性暴力は駄目ですよ)。

さて、そんな諸戸くんですが、私は彼こそが『孤島の鬼』に人を惹きつける魔法使いのように思えてなりません。

そもそも、諸戸くんは乱歩先生に少し似ているところがあると感じます。

乱歩先生曰く、「初恋と言っていいのは15歳のときで、実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったよう」だったそう。

つまり、乱歩先生の初恋は男の子だったんですね。

初恋を経験した乱歩先生の歳と諸戸くんの歳ではかなり離れていますが、「プラトニックで、熱烈で、一生の恋がみんな使いつくされてしまった」点では共通しているのではないでしょうか。

ちょっとしたネタバレになってしまうのですが、諸戸くんは文字通り死ぬまで蓑浦くんのことを愛し続けていたので、「一生の恋がみんな使いつくされてしまった」という言葉がぴったりです。

また、乱歩先生は初恋が男の子だというだけではなく、友人と今で言うBL小説を探したりゲイバーに通ったりしていたそうなので、諸戸くんは書いていて感情移入や自己投影がしやすかったのではと考えられます。

乱歩先生が魂を込めて書いたと思われる諸戸道雄くん。

彼のインパクトのある存在が、『孤島の鬼』に人を惹きつけてやまない魔法をかけているのではないでしょうか。

 

他のメディアで『孤島の鬼』を楽しみたい!

この記事を読んで、

「『孤島の鬼』、知らなかったけど面白そう!」

「でも、長編小説を読むのは苦手……」

と思ってくださった方、朗報です!

なんと『孤島の鬼』は、映像化&コミカライズされているんです。

コミックは手軽に買える単行本から、じっくり読める全3巻仕立てまで。

映像では他の江戸川乱歩作品の要素を取り入れた映画や、舞台をDVD化したものがあります。

おうち時間に江戸川乱歩作品、いかがでしょうか。

もちろん、他の江戸川乱歩作品を読んでから『孤島の鬼』を手にとってみるのもオススメ。

乱歩先生の作品は短編が多いので、まずはいくつか読んでみて、文章やストーリーに魅力を感じられたら長編に挑んでみるのもいいと思います。

始めにも書きましたが、現代はとにかく本を読む人が少ないです。

「小説なんて難しそう……眠くなりそう……」と思って鼻から遠ざけるのではなく、漫画や映画など興味を持てるところから少しずつ読書の世界に足を踏み入れてみてください。

 

おわりに

『孤島の鬼』はいかがだったでしょうか?

今回主に紹介した諸戸くんだけでなく、主人公の蓑浦くんやその恋人である初代さん、探偵の深山木まで、乱歩先生の手から生み出される人物は皆、現実に生きているかのような生々しさとみずみずしさを持っています。

長編ではありますが、文章はちっとも難しくなんてありません。

ジャンルは探偵小説なので謎はたくさん出てきますが、全て華麗に解決されていきます。

そして、読書は退屈なことなんかではありません。

本当に面白い本は、ページを捲らざるをえないほどの魅力を持っているんです。

あなたも、江戸川乱歩先生の魔法にかけられた小説の一ページ目を捲ってみませんか?

いいね!!

この"好き"を書いてる人

Lyrical_H

SNSでみんなに魅力を伝えよう!